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会長挨拶

起業意識の育成について

日本作業療法士連盟 会長 杉原素子
日本作業療法士連盟 会長 杉原素子
日本アムウエイの企画で催された起業意識の育成について企業家らが意見を交わすシンポジウムが、4月下旬に都内で開かれた。そこでは、米国アムウエイが、企業願望や実行に移す意欲など「起業家精神」を独自のスコアで算定し、その結果日本は45か国中ブルガリアとともに最下位であったと報告された。また、若者の起業意識を探ろうと、昨年実施した調査(日本、米国、インド、フィンランドの18~29歳男女計900人)の結果が報告され、そこでも日本は若いうちから起業への関心が低く、野心や向上心、自身の無さが目立つとのことであった。この調査による企業家イメージは、様々なベンチャー企業だろうが、ふと作業療法士業界の起業家たちのことを思った。少なくとも、勢いのある(羽振りの良い?)作業療法士業界の起業業家たちは、これからのリハビリテーションサービスの姿を変えていくのは自分たちであるという強い信念を持ち、後輩たちの育成に取り組む体制作りが急ぎ必要だと思ったのである。

これまでの私たち作業療法士50年の歩みを振り返ると、社会ニーズに応じた体制に辿り着くのに時が掛かり過ぎ、辿り着いた時には、次のニーズの対応が必要な時期になっていた状況を無念に思っている。リハビリテーション専門職種として、国の施策転換にあまりにも政治力が弱すぎた結果なのかもしれない。

「人間は仕事を通して成長していかなければなりません。その鍵となるのは好奇心です。常に問題を求め、積極的に疑問を出していく心と頭が必要です。仕事の環境に文句を言う人は沢山いますが、開かれた頭で何かを求めていく姿勢が無ければなりません。国連機関がサービス機関である限り、役に立つサービスをしなければ存在意義はありません」は、世界平和の構築のために、国連難民高等弁務官を10年務めた、緒方貞子氏の「世界へ出ていく若者たちへ」のメッセージの一部である(「私の仕事」:緒方貞子、朝日文庫)。緒方貞子氏のこのような現実主義、現場主義、プラグマティックな姿勢を作業療法士たちに厳しく教え込んでくれるのは作業療法士の起業家たちであると思っている。

ところで、高等教育における現在の話題の一つは、学習成果の可視化である。緒方貞子氏が述べるような、社会に出た後に役立つとされる人間力(competency)を育てるべき作業療法士養成校は、今や各校が掲げたデイプロマポリシーよりも、各校の国家試験の合格率を第一に置き、そのための留年・退学など、未来ある若者たちの心と頭を閉ざさせているのではないかと懸念している。



2017年05月